カナダ・消費者物価指数(CPI)とは、カナダ統計局が、カナダ国内や地域ごとの物価変動率を算出し、公表する指標です。
CPIの算出には、日本やインドなどの国々と同様、固定バスケット方式を採用しています。カナダの場合、バスケットを8つの主要なジャンルに分類し、そのジャンルごとに調査対象とする財やサービスを定め、それぞれの項目の変動率を算出する方式を取っております。
固定バスケットに含まれる8つのジャンルは、以下の通りです。
①食料品、②住居、③家具・備品、④衣類品
⑤輸送機関、⑥健康、⑦娯楽・教育、⑧嗜好品
また、カナダ全体の結果だけでなく、10ある州ごとの結果も公表されるため、地域ごとの分析も可能になっております。
目次
カナダ統計局が公表する主な3つのコアCPI
コアCPIとは、バスケットに含まれる項目の内、変動率が特に激しい項目を除いたCPIのことを指し、何の補正もせず単純に算出されたCPIよりも、コアCPIの方が注目される傾向にあります。
また、コア・CPIには、その算出方法にいくつかの種類があり、国によっても、どのコアCPIを重要視するのかも異なってくるため、以下では、カナダで公表される主な3種類のCPIについて紹介していきます。
1. 景況感を判断する際に参考にされるCPI「CPI-Common」
「CPI-Common」は直訳すると、「一般的なCPI」となります。「CPI-Common」では、ファクターモデルと言われる統計手法を用いており、特殊要因(特定の財やサービスの急激な変動など)を取り除いて算出されます。
また、カナダ中央銀行が、国内の景況感を判断する際に参考するCPIでもあるため、カナダのCPI関連のニュースでも、目にすることがあるかと思います。
2. 特殊要因を除外したCPI「CPI-trim」
日本のニュース記事では 「CPIトリム」と記載されるのが一般的です。トリムCPIは、バスケットを構成する財やサービスの内、変動率が極端に大きい部分と小さい部分を除外して算出する手法となります。
カナダ統計局は、変動率の下位20%と上位20%を除外してトリムCPIを算出しております。従って、CPIバスケットの内、合計40%部分を取り除いて公表されたものが、カナダのトリムCPIとなります。
トリムCPIについては、カナダよりもオーストラリアでの方が注目されます。以下の記事で、オーストラリアでのトリムCPIの役割について軽く書いてますので、気になる方は一読ください。
3. 中央値を示すCPI「CPI-median」
「CPI中央値」と言われ、バスケットに含まれる財やサービスの変動率を、低い方から順に並べ、真ん中にあたる変動率を示します。
例えば、パン、ワイン、自動車の3つから構成されているバスケットで、それぞれの変動率が+0.5%、+1.2%、+0.8%だと仮定すると、このバスケットにおけるCPI中央値は、+0.8%となります。
その他の情報
以上の通り、カナダ政府は主に3種類のコアCPIを公表しております。手法によってそれぞれの算出方法は異なりますが、極端な変動要因を除き、ノイズを排除しようとしている点ではどれも同じです。
カナダのコアCPIについて紹介したところで、続いては、カナダCPIの動向を見ていきます。そして、最後には、カナダCPIについての「まとめ」を載せておきますので、要点を抑えるために読んでいただければと思います。
4. カナダ・CPIの推移
以下の図は、2018年8月以降のカナダCPIの推移を示すグラフです。
*参考までに、カナダ中銀は、インフレ率の目標を、前年同月比+2.0%としています。

2019年以降は、カナダ中央銀行が目標とする+2.0%代付近をキープするも、2020年3月に、感染症拡大の影響を受け大幅に低下。
その後マイナス圏で推移するも、6月には+0.7%と大幅に回復し、2011年以降で最大の上昇幅となりました。
感染症拡大以降、インフレ率が低水準で推移している主な原因としては、ガソリン価格の低下が背景にあります。実際、2020年5月時には前年比-29.8%、6月は同-15.7%と、下げ幅は縮小しましたが、依然全体の結果に対する低下圧力となっています。
5. まとめ
カナダCPI | |
公表機関 | カナダ統計局 |
公表タイミング | 毎月中旬 |
指標概要 | カナダ国内における 物価変動率を毎月集計し、 公表する指標。 カナダ中銀は、主に インフレ率を参考に金融 政策を実施しているため、 重要度も割と高い。 |
主要8ジャンル | ①食料品 ②住居 ③家具・備品 ④衣類品 ⑤輸送機関 ⑥健康 ⑦娯楽・教育 ⑧嗜好品 |
主なコアCPI | ①CPI-common ②CPI-trim ③CPI-median |
☆ 情報の信頼性
本記事で紹介した3つのコアCPIの説明は、主に下記文献①を参考に作成し、その他のCPIの説明部分に関しては、文献②を参考にしております。
また、「カナダCPIの推移」のデータについては、参考元に記載のある通り、みんかぶのデータを参考にしておりますが、過去動向についての説明部分は、文献③を基に作成いたしました。
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