あなたは、ブラジルの金融政策についてどれほどのことを知っていますか?
そもそも、ブラジルの金融政策についてなど、知らなくても生きていく上で何ら困らない知識ですが、この記事を読み進めようとしてくださっている方であれば、多少は興味があるのではないでしょうか?
今回は、あまり認知度の高くないブラジルの金融政策に関する情報や政策金利についてなど、幅広く紹介していきます。
▪️この記事から知れること
・開催頻度
・金融政策の目的
・金融政策決定までの流れ
・ブラジルの政策金利について
・最新データ取得方法
・次回会合開催日の確認方法
目次
・金融政策の開催頻度
ブラジルの金融政策の方針や政策金利の誘導目標を決定する金融政策委員会は、1年に8回開催 されます。日次で考えると、45日に1回開催される計算です。
ブラジルだけでなく、日本のMPM、アメリカのFOMC、イギリスのMPCも年に8回開催されており、主要国の間では、年に8回開催としている国が多々見受けられます。
・金融政策の目的とは?
金融政策の目的は、「物価の安定を通して、経済が成長しやすい環境を作ること。」 にあります。これは、金融政策を行っているほとんどの国に関して言えることであり、各国の中央銀行のホームページを見ても、金融政策の目的として「stable prices(価格の安定)」を掲げている国がほとんどです。
実際に、ブラジル中央銀行(BCB)の金融政策について記載されたホームページには、「インフレ率を目標付近で保つことが重要な目標だ。」と記載されています。
Keeping inflation around the target is a fundamental objective of the Banco Central do Brasil (BCB).
では、なぜ、物価を安定させることがそれほど重要なのでしょうか?
それは、物価の安定は、経済成長にとって不可欠だとされるからです。
例えば、価格が安定していれば、将来の計画を立てやすくなるため、企業の投資行動を喚起することにつながります。また、私達自身も、今後も物価は安定するという安心感があれば、将来の物価に対する不安を抱えずに、お金を使うことができるはずです。
このように、「物価の安定」は、経済が成長するための必須条件だと言えます。
従って、ブラジルの中央銀行は、「物価の安定」が経済成長には欠かせないと認識しているため、物価の安定を目的として金融政策を行っているのです。
・ブラジルでの金融政策について
「物価の安定を目的として、金融政策を実施している」というのは、ご理解いただけたと思いますが、そもそもブラジルにおける金融政策とは、何をするのでしょうか?
以下にて、引用したブラジル中央銀行の説明によると、政策金利であるSelic interest rate(セリックレート)の誘導目標の設定をメインの金融政策ツールとしていると記載されています。
The main monetary policy tool is the target for the Selic interest rate, set by the Monetary Policy Committee (Copom).
実際に、Selic interest rateの誘導目標の引き上げや引き下げが市場に影響するまでの流れは下記の通りです。
✔ 政策金利の誘導目標を引き上げた場合
①中央銀行が政策金利の誘導目標引き上げを決定
⬇️
②中央銀行は、民間銀行に債権などを売りつけ、民間銀行から資金を吸収
⬇️
③民間銀行は、手持ちの資金が少なくなるため、他行に貸し出す際の金利(Selic interest rate)を引き上げる
⬇️
④銀行間で資金をやり取りする際の金利(Selic interest rate)が上がれは、銀行が他行から資金を調達しにくくなるため、企業や個人への貸出す際の金利も上昇
⬇️
⑤企業や個人は、銀行からお金を借りる際の金利が高くなったので借入を控える
⬇️
⑥借入を控えれば、市場に出回るお金の量が減り、お金の価値が上がるので物価が下がる
✔ 政策金利の誘導目標を引き下げた場合
①中央銀行が政策金利の誘導目標引き下げを決定
⬇️
②中央銀行は、民間銀行から債権などを買い付け、対価として、新規で貨幣を発行して支払い
⬇️
③民間銀行は、中央銀行への債権などの売却によって、手持ちの資金が増えるため、他行に貸し出す際の金利(Selic interest rate)を引き下げる
⬇️
④銀行間で資金をやり取りする際の金利(Selic interest rate)が下がれは、銀行が他行から資金を調達しやすくなるため、企業や個人への貸出す際の金利も低下
⬇️
⑤企業や個人は、銀行からお金を借りる際の金利が低くなったのでチャンスだと思い借入を増やす
⬇️
⑥借入が増えれば、市場に出回るお金の量が増加し、お金の価値が下がるので物価が上がる
以上が、ブラジル中央銀行が行う金融政策のメカニズムです。
以上の通り、ブラジル中央銀行は、政策金利であるSelic interest rateの誘導目標を引き上げたり、引き下げたりすることによって、金融政策の目的である「物価の安定」を図っているのです。
・金融政策が決定されるまでの流れ
ここまで、読んでいただいた方は、ブラジル中央銀行が金融政策を行う目的と、その目的を達成するために行われる金融政策の手段について、お分かりいただけたことかと思います。
では、そもそも、金融政策の今後の方針や政策金利の誘導目標はどのような流れで決定されるのでしょうか?
この質問に答えるため、本項では、金融政策を決定する際に開かれる「金融政策決定会合」について説明していきます。
✔ 金融政策決定会合の概要
ブラジルの金融政策決定会合は、 年に8回(45日に1回)、火曜日と水曜日のAM8:00〜2日間に渡って行われるのが通例です。会合1日目(通常火曜日)
1日目は、ブラジル中央銀行(BCB)の職員による、国内経済や世界の経済情勢、ブラジル経済の今後の見通しについてなどのプレゼンテーションが行われます。
金融政策決定会合に参加しているメンバーは、中央銀行職員によるプレゼンテーションを拝聴し、今後の金融政策を決定するための判断材料とします。
会合2日目(通常水曜日)
2日目は、主に金融政策の方針や政策金利の決定を行います。1日目の経済動向に関するプレゼンテーションや、今後のマクロ経済の見通しを基に議論を進めていきます。
そして、現状のインフレ率とインフレ目標との乖離なども考慮した上で、金融政策の方針と政策金利の誘導目標が決定されます。
金融政策決定会合後
会合後は、金融政策の方針や政策金利の誘導目標の公表が行われます。その後、決定した政策金利の誘導目標付近でSelic interest rateを推移させるため、民間の金融機関に債権などの売買(公開市場操作)を行います。
以上が、金融政策の方針や政策金利が決定されるまでの流れです。ブラジル中央銀行は、このように2日間に渡る会合を経て、金融政策を策定しております。
・金融政策決定会合の日程確認方法
ブラジルの金融政策決定会合は、アメリカのFOMCや、イギリスのMPCなどと比較すると注目度が低いため、会合のスケジュールを日本語で紹介しているサイトはほとんどございません。
ですので、ブラジル中央銀行が公表しているスケジュールへ直接アクセスする方法をご紹介します。
③まで手順を進めると、「Copom Meetings Schedule」と記載されている箇所があり、そこに、その年における金融政策決定会合の開催日が記されております。
2020年だとこんな感じですね。
2020 Copom Meetings Schedule
February 4 and 5
March 17 and 18
May 5 and 6
June 16 and 17
August 4 and 5
September 15 and 16
October 27 and 28
December 8 and 9
・政策金利の最新データ取得方法
政策金利の推移は、ブラジル中央銀行の「Selic interest rate」から確認することができます。
リンク先のサイトにアクセスし、一番下までスクロールすると、茶色の折れ線グラフが確認できるはずです。
このグラフでは、直近10年間の「Selic interest rate」を参照することができます。
また、グラフをタップすれば、特定の年月の「Selic interest rate」も確認できるようになっております。
・まとめ
本記事では、ブラジルの金融政策決定会合についてや、政策金利、金融政策の目的など、ブラジルの金融政策にまつわる内容を幅広く紹介しました。
恐らく、ここまでブラジルの金融政策について説明しているサイトも他にないと思いますので、ブラジルの金融政策について知りたい方(そんな人いるのかな?)にとっては、多少なりとも為になったのではないかと思います。
