株価の暴落を先読みする指数として人気を集める「ラッセル2000指数」。暴落の予兆を事前に知らせるといった意味合いから、「炭鉱のカナリア」 と呼ばれています。

ラッセル2000指数は、米国の小型株を対象とする株価指数で、米国で上場している株式の時価総額上位1001位から3000位を構成対象としております。
「大型株と言えばS&P500、小型株と言えばラッセル2000」と言われるほどであり、中小企業の動向を追う上で投資家に重要視される株価指数なのです。
そのため、下記引用文にもある通り、米国の小型株を中心とするほとんどのファンドに、ベンチマークとして採用されています。
ニューヨーク証券取引所やNASDAQなどに上場している銘柄のうち、時価総額が上位1001位から3000位までの銘柄の浮動株調整後の時価総額加重平均型の株価指数です。米国の小型株ファンドのほとんどがベンチマークとして採用しています。1986年12月31日を基準値(135.00)として算出されており、小型株指数としての継続性を重視して年1回銘柄入れ替えを実施しています。
今回は、中小企業の株価動向を追う上で欠かせない「ラッセル2000」指数について徹底的に解説していきます。

・ラッセル2000について
・業種別構成比率
・SP500との違い
・SP500と比較した過去動向
目次
・ラッセル2000指数とは?
ラッセル2000指数は、米国で上場している株式の時価総額上位1001位から3000位を構成銘柄の対象としており、 1984年、フランク・ラッセル・カンパニー によって考案された株価指数です。また、現在の指数は、創作から約2年後の 1986年12月31日時点を基準値(135.00) として、算出されています。
尚、ラッセル2000指数の構成銘柄の対象は、「ラッセル3000指数」を構成する銘柄の内、下から3分の2の構成銘柄と同一になります。

・ラッセル2000指数の業種別構成比率
2020年9月30日時点の業種別構成比率の割合は、以下の図の通りです。
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画像引用元: FTSE Russell
グラフを見ると、 構成比率1位がHealth Care(健康)、2位がConsumer Discretionary(一般消費財・サービス)、3位がIndustrial(工業)となっております。
また、3つの業種の構成比率は全体の50%以上を占めるため、現在のラッセル2000指数は、特に、 「健康関連」「一般消費財・サービス」「工業」の影響を受けやすい株価指数 であると言えます。
・暴落の先行指数!?炭鉱のカナリア
ラッセル2000指数の構成銘柄対象は、米国で上場している中小企業です。
その中小企業は、大企業よりも資金が潤沢でない分、不景気の影響を大企業よりも受けやすいといった特徴があります。
また、中小企業の業績が悪化すれば、ドミノ倒しのように取引先である大企業の業績にも影響を及ぼします。
従って、景気動向が悪化すれば、「S&P500」や、「ダウ平均株価」といった大型株を中心とする株価指数よりも、中小企業を構成銘柄の対象としている「ラッセル2000指数」の方が先に下落する傾向にあります。
このように、「ラッセル2000指数」は、暴落の先行指数のような働きをするため、「炭鉱のカナリア」 と呼ばれているのです。
・「S&P500」とは何が違うのか?
S&P500もラッセル2000指数も時価総額加重平均型の株価指数であり、市場動向を追う上でのベンチマークとして活用されるといった点では同じです。
また、両者をベンチマークとしたETFも世の中にはたくさんあるといった点も類似点として挙げられます。
両者の類似点について簡単に確認したところで、以下にて相違点を紹介していきます。
✔S&P500とラッセル2000指数の相違点
S&P500とラッセル2000指数の主な相違点は、下記の通りです。
①大型株が対象か小型株が対象か
S&P500は、米国で上場している代表的な企業500社を対象とした株価指数であるのに対し、ラッセル2000指数は、中小企業を対象としている点で異なります。
しかし、後程紹介しますが、S&P500もラッセル2000指数も同じような値動きをしております。
②グローバル企業メインか国内メインか
S&P500は、米国を代表する大企業で構成されているため、構成銘柄の中にはグローバル企業も多く含まれます。
一方で、中小企業メインのラッセル2000指数は、国内のみでビジネスを展開している企業がほとんどです。
従って、ラッセル2000指数は、国内をビジネスの主戦場としている中小企業の動向を追う上で、しばしば活用されます。
③構成銘柄の選出方法
S&P500とラッセル2000指数は、構成銘柄の選出方法にも違いが見られます。
S&P500は、四半期に一度実施される「構成銘柄の見直し」によって、委員会により対象銘柄の見直しが行われます。
一方で、ラッセル2000指数は、もっと機械的な構成銘柄の選出方法をとっており、対象銘柄を公式的に選出しております。
具体的には、 「一株当たり1$未満の銘柄、OTC(店頭取引)のみで取引されている銘柄、時価総額が3,000万$未満の銘柄を除く、ラッセル3000指数の時価総額下位2,000銘柄」 を構成銘柄対象としております。
このように、紫色の下線 を引いた銘柄を機械的に選出し、構成銘柄としているため、ラッセル2000指数は、S&P500と比較して、より機械的な銘柄選出方法を採用していると言えます。
・S&P500 VS ラッセル2000指数
以下の図は、2016年以降のS&P500指数とラッセル2000指数の値動きを比較したグラフです。
青色がS&P500、橙色がラッセル2000指数を示しています。
グラフを見ると、2016年以降から2018年始めまでは、両指数とも拮抗していることが見てとれます。しかし、2018年の後半になり、米中貿易摩擦が深刻化すると、両者とも下落。
2019年以降は、S&P500がラッセル2000指数を上回る形で推移し、両者に乖離が見られるようになりました。
2020年2月頃になると、パンデミックの影響を受け、大幅下落し、現在は両指数とも上昇基調にあります。
引用元: Bloomberg

・まとめ
ラッセル2000指数は、 小型株を対象とした米国を代表する株価指数です。景気動向の影響を特に受けやすい中小企業を構成銘柄の対象としているため、市況が悪化した際には、他の株価指数より先行して下落する傾向にあります。
そのような、株式市場の危険信号を事前に検知するといった特徴から「炭鉱のカナリア」と呼ばれているのです。
ラッセル2000指数は、2016年から2018年までの2年間ほどは、S&P500と連動する値動きをみせていました。
しかし、米中貿易摩擦が激化した2018年後半以降、感染症拡大の影響もあり、両者の値動きは乖離しています。
今後も、ラッセル2000指数は、「炭鉱のカナリア」としての機能を果たし続けることができるのか、その値動きを注視していきたいと思います。
ラッセル2000指数 | |
指標開始年 | 1984年 |
構成銘柄 | 米国上場企業の時価総額 上位1001位から3000位 |
構成比率 | 1位: 健康 2位: 一般消費財・サービス 3位: 工業 |
基準値 | 1986年12月31日を135.00 |
S&P500との 主な違い |
①大型株or小型株 ②グローバルメイン or国内メイン ③構成銘柄の選出方法 |