[徹底解説]期待インフレ率とはなんなのか?どうやって計算されるのか??


1.期待インフレ率とは?

期待インフレ率とは、一言で表すと市場が予想する物価上昇率です。


国民が予想するインフレ率を示すことから「予想インフレ率」とも呼ばれています。


後ほど詳しく説明しますが、期待インフレ率は、中央銀行による企業&家計へのアンケート調査や、過去のインフレ率、利付債と物価連動債国債の利回り差などから算出されます。


また、期待インフレ率は、将来における実際の物価や景気動向に影響を与えるため、金融政策でも非常に重要視されている指標です。


KEY WORDS
・期待インフレ率(予想インフレ率)は、市場が予想する将来のインフレ率

・実際のインフレ率の先行指標

・期待インフレ率は、中銀によるアンケート調査、BEI、過去のインフレ実績などから算出される

・フィッシャー方程式によると、期待インフレ率=名目長期金利-実質長期金利で求められる

・期待インフレ率は、景気動向にも影響を与える指標

・期待インフレ率の動向によっては、利上げ/利下げをしてもあまり効果が期待できない場合がある

2.期待インフレ率はどうやって計算されるのか?

一概に「期待インフレ率」と言っても、その算出方法には大きく分けて以下3つのパターンがあります。

3つの決定方法

①家計や企業に対する中央銀行のアンケート調査から算出する。

②固定利付債と物価連動国債の利回り差から算出される「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)を利用する。

③過去のインフレ率の実績から算出する。


①と③に関しては、イメージがつきやすいかと思いますが、②については、なかなか想像しにくいと思いますので、②について深掘りしていきます。


まず、②に記載されている固定利付債とは、利率が予め決められており、定期的に利子が支払われ、満期時には元本が償還される債権です。


一方で、物価連動国債とは、利率は固定されておりますが、元本がインフレ率に連動して変動する債権のことを指します。


厳密には、物価連動国債は消費者物価指数(CPI)から生鮮食品を除いた「コア・CPI」の動きに応じて、元本が増減する債権です。


そして、満期が10年間程度の固定利付債と、満期が10年の物価連動国債の利回り差は「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」と呼ばれ、この「ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)」が「期待インフレ率」とされることもあります。


そもそも期待インフレ率の計算式は、フィッシャー方程式に基づくと、期待インフレ率=名目長期金利-実質長期金利で算出できるとされています。


10年物国債の利回りが、名目長期金利の代表的な指標となっており、物価連動国債の利回りが、物価を考慮した実質長期金利を示すとされるため、両者を差し引くことによって、理論的には期待インフレ率を算出することができるという訳です。


しかし、実際には、物価連動国債の価格は、将来に対するインフレ予想だけではなく、投資商品であるがゆえのリスクプレミアムが少なからずつくため、期待インフレ率を如実に反映するわけではない点には注意が必要です。


リスくん
国際について、より詳しく知りたい方は、財務省が公表している「ご存知ですか?国債」を一読ください。

3.金融政策と期待インフレ率

期待インフレ率は、あくまでも将来のインフレ率に対する予想値にすぎませんが、実際のインフレ率に先行して動くとされています。

そのため、物価(インフレ率)の安定を目的として行われる金融政策では、期待インフレ率をターゲットとして、金融政策が行われることが多々あります。


実際に期待インフレ率の増減が、景気動向に与える影響は下記の通りです。


例えば、景気過熱抑制を目的として、中央銀行が政策金利の引き上げを行ったが期待インフレ率が名目金利と同じくらい高い場合、




中央銀行が景気過熱の抑制を目的として、政策金利(名目長期金利)の引き上げを実施したのにも関わらず、実質金利(物価の変動率を考慮した金利)は0%と変化していないため、景気動向に影響をもたらせれてないことが見て取れます。


もし、期待インフレ率が名目金利より低い場合は、どうなるのでしょうか?



政策金利(名目長期金利)の引き上げが、期待インフレ率よりも高いため、物価変動を考慮した実質金利も上昇し、企業や個人は金融期間から資金を借り入れる際のコストが上昇するため、借り入れの抑制につながります。


借り入れが抑制されると、市中に出回るお金の量が減少するため、景気過熱が抑制される可能性を期待できます。


このように、期待インフレ率の増減によっては、金融政策によって意図した政策効果が得られない可能性もあるため、期待インフレ率の増減は、景気動向を左右する重要な要素とされています。


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金融政策の仕組みについて詳しく知りたい方は、「英中銀 金融政策委員会(MPC)決定会合について徹底解説!!金融政策の決定プロセスから他国との比較まで。」の「金融政策って何をするの?」の項目を参照してね!

4.期待インフレ率の推移&記事読解!!

以下の引用文は、2020年10月にQuickが公表した「米期待インフレ率が上昇中、それでも前回の株高のような期待は禁物」という記事からの引用です。


10月9日の米債市場で10年物BEI(ブレーク・イーブン・インフレ率、市場が織り込む期待インフレ率、青線)は1.73%と9月2日以来の高水準を付けた。8月末にかけてBEIが上昇した局面では長期金利(緑線)がおおむね横ばいで推移したことで実質金利が低下し、株高やドル安など様々な市場に影響を与えた。一方、足元はBEIを反映して長期金利も上昇しており、実質金利に与える影響は限られている。

引用元: Quick Money World


この記事をここまで読んで下さった方であれば、上の記事の意味がお分かりになるかと思います。


もし、引用記事の内容がよく分からなかった方は、上で紹介した「フィッシャー方程式」を思いだしてください。


期待インフレ率はフィッシャー方程式によると、期待インフレ率=名目長期金利-実質長期金利で求められます。


フィッシャー方程式を基に考えると、上記記事の以下部分では、期待インフレ率(BEI)が上昇したのにも関わらず、長期金利(名目長期金利)が横ばいであったため、必然的に、実質金利が低下したということが分かります。


8月末にかけてBEIが上昇した局面では長期金利(緑線)がおおむね横ばいで推移したことで実質金利が低下


以下引用部分にある記事の残りの部分を見ていきます。実質金利が低下すると、企業や個人は金融機関からお金を借り入れる絶好のチャンスであるため、資金の借入額が増加します。


その借り入れた資金が、設備投資などを通じ市場に流通し、資金の流通量が増えると、金あまりの状態になり、株式などのリスク資産に向けられる資金が増加します。


その結果、株高などの影響を与えるようになるのです。


8月末にかけてBEIが上昇した局面では長期金利(緑線)がおおむね横ばいで推移したことで実質金利が低下し、株高やドル安など様々な市場に影響を与えた。一方、足元はBEIを反映して長期金利も上昇しており、実質金利に与える影響は限られている。


このように、期待インフレ率の概念を理解できるようになると、金融関連記事への理解度がグンと深まります。


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