日本は、世界全体のLNG(液化天然ガス)需要の4分の1を占めるLNG消費大国です。(2018年時点「日本エネルギー経済研究所」 )
人口1億2,800万人程の国が、LNG世界需要の4分の1を占めてると考えると、ものすごいことですね。
このように、LNGは日本にとって欠かせないエネルギー源となっておりますが、最近話題になっている「電力不足問題」により、LNG価格は急騰しています。

そこで本記事では、日本やアジアの国々にとって、LNGをスポットで調達する上で重要となる市場「JKM」について徹底的に解説した上で、今回の電力不足問題の原因等についても触れて行こうと思います。
目次
1.JKMとは??
JKMとは、「Japan Korea Market」の略称であり、S&P グローバル・プラッツ (S&P Global Platts)が、2009年2月から配信している北東アジアのLNG(液化天然ガス)スポット価格のベンチマークとなる指標です。
JKMは、日本・韓国・中国・台湾市場に運び込まれたLNGのスポット価格を反映しており、LNGが実際に売買される価格を示しています。
これらの市場は、LNGにおける世界需要の大半を占めているため、JKMにおけるLNGのスポット価格は、非常に重要度が高いと言えます。
また、LNG需要の拡大により、LNGにおけるファンダメンタルズの側面が、今まで以上に価格に反映されやすくなってきています。


2.どのようにして、S&P・プラッツは指数を評価しているのか?
JKMにおけるLNG(液化天然ガス)のスポット価格を日次で公表している「S&P グローバル・プラッツ」は、そもそもどのようにして、需要と供給に見合うようなスポット参考価格の決定を行っているのでしょうか?
実際に、S&P グローバル・プラッツが公表している「Platts JKM™ (Japan Korea Marker) LNG Price Assessment」によると、下記事項を考慮して、日々のスポット参考価格(ベンチマーク)を決定しているそうです。
価格を決定する要素
- 日中帯の取引
- ビッド(買い手が提示するレート)
- オファー(売り手が提示するレート)
- ファンダメンタルズ
- 市場関係者からの報告
以上の通り、S&P グローバル・プラッツは、買い手と売り手の希望取引価格やLNG産出国の状況などを含むファンダメンタルズなどを参考に、JKMにおけるLNGスポット価格のベンチマーク(参考価格)を決定します。

また、「ファンダメンタルズ」の要素の中には、生産者、消費者、トレーダーなどから収集した情報も含まれており、様々な市場関係者から幅広く情報収集している様です。
このように、S&P グローバル・プラッツは、日中帯の取引状況や市場関係者へのヒアリング、LNG市場を取り巻く環境など幅広い情報を活用することによって、LNGのスポット取引が円滑に行われるようなベンチマーク(LNGスポット価格の参考価格)を算出しているのです。
3.JKMにおけるLNG価格の値動き
新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2020年4月以降、JKMにおけるLNGスポット価格の推移は、1年足らずで史上最安値と最高値をつけるほど、激しい値動きとなりました。もともと、新型コロナウイルス感染拡大前の2020年1月は、暖冬による需要減により、LNGのスポット価格は下降基調にありました。
2月に入ると、中国で新型コロナウイルス感染が問題視され始め、JKMの価格は$3/MMBtuまで低下。
続く3月・4月には、感染症の更なる拡大を受け、世界中でLNG需要が消失した結果、4月28日のJKMは、$1.825/MMBtuと、過去最低価格を更新しました。
5月に入り、液化設備点検による供給不足やロックダウンの緩和による需要回復期待により、$2.00/MMBtu以上に回復。
7月には猛暑などの影響を受け、$5.00/MMBtuまで回復。その後、9月〜11月でも価格は緩やかに上昇し、$5.00〜$7.00/MMBtu程のレンジで推移しました。
2021年に入ると、LNGの在庫減少が火力発電の出力低下を招き、深刻な電力不足が発生。電力会社は、早急に市場からLNGを調達しようとしましたが、争奪戦となり、$30.00/MMBtuを超える史上最高値を更新しました。
4.JKMも関係している!?なぜ、停電が懸念されるほどの電力不足が発生したのか?
2020年12月末から2021年1月にかけて、深刻な電力不足が発生しました。
通常であれば、国内で電力不足分が発生すると、エネルギー市場から必要な分のエネルギーを購入し、難をのがれるのですが、今回は世界的に受給が逼迫したため、市場からの調達も容易にはいかない状況に陥りました。
こうした今回の電力不足は、いくつかの要因が重なり発生したとされています。
一般的に言われている要因は下記の通りです。
電力不足の主な原因
- 寒波による急激な電力需要の増加
- 火力発電の燃料となるLNG不足
- 産ガス国での設備トラブル
- パナマ運河手続き遅延
このように、様々な要因が挙げられますが、最大の要因は、「火力発電の燃料となるLNGの不足」だとされています。
ではなぜ、LNGが不足するような事態に陥ってしまったのでしょうか?
その原因を探るため、LNGの供給サイドと需要サイドにおきた出来事を見ていきます。
LNGの供給面に着目すると、産ガス国での設備トラブルや、海外からエネルギーを輸入する際の要所となる「パナマ運河」での手続き遅延などが相重なり、JKMなどの市場に供給されるLNGの量は減少しました。
需要の面では、新型コロナウイルスによるロックダウンにより、需要の減少が見込まれていましたが、急激な寒波を背景に、需要が予想外に拡大する羽目となりました。
このように、LNGの供給量は減少しているのにも関わらず、需要は拡大し続けるといった状況が発生したために、LNGが不足するといった事態が発生したのです。
こうして発生したLNG不足は、LNGを使用した火力発電が4割を占める日本に大きな影響をもたらし、結果として、全国的な電力不足に陥ったとされます。
・北東アジアのLNGスポット価格のベンチマーク
・S&P グローバル・プラッツが公表している
・単位は百万Btu(MMBtu)
・日中帯の取引、ビッド、オファー、ファンダメンタルズ、市場関係者からの報告などの情報を基に価格が決定される
・ LNG不足が、LNGを使用した火力発電が4割を占める日本に影響を与え、全国的な電力不足に陥った。