景気判断の重要な材料としても使用される日銀短観。通称、「短観」。タイトルにもある通り、調査対象社数が約1万社、アンケートの回答率が99%程と、圧倒的高さを誇ります。
その上、調査対象者数と回答率が高いだけではなく、回答に対するチェックもしっかりと行われていることで有名です。そのため、信頼性も高く、GDPと同じくらいの重要視される指標でもあります。
また、日本銀行が力を入れている調査なだけあり、日銀の金融政策の方針を決定する上でも参考にされます。従って、日本の金融政策の動向を追う海外の市場関係者からの注目度も高く、海外では、「TANKAN」として知られています。
日銀短観について詳しく
正式名称「全国企業短期経済観測調査」
日本銀行が資本金2,000万円以上、約1万社の民間企業を対象に、四半期毎に実施する企業動向に関する統計調査です。調査内容は、業況判断、売り上げ、設備投資や雇用など多岐に渡り、企業規模別(大企業・中堅企業・中小企業)、業種別に調査が行われるため、詳細な分析が可能となっています。
日銀短観に含まれる調査項目は、主に下記の通りです。
・業況判断DI(最近&先行き)
・需給、供給、価格判断DI
・雇用人員判断DI
・年度計画(売上高、利益額、設備投資額)
上記以外にも、1年後・3年後・5年後の販売価格変化率の見通しを示した「企業の物価見通し」や、調査対象を200社程の金融機関に絞った「金融機関の業況判断」など様々な項目が含まれます。


日銀短観で頻出する「DI」とは?

DIとは、調査項目の内容に対して(例えば、業績判断DIなら会社の業績に関して)「良い」「さほど良くない」「悪い」や、「良い」「やや良い」「変化なし」「やや悪い」「悪い」といったように、3者もしくは、5者択一形式で回答してもらい、回答結果を数値化したものです。
景気ウォッチャー調査の「現状判断DI」や「先行き判断DI」のように、回答結果をそれぞれの構成比で掛け合わせていくタイプのものや、日銀短観の業績判断DIのように、「良い」と回答した企業の割合から「悪い」と回答した企業の割合を引いて算出さらるタイプのものがあったりと、調査内容によって算出される方法が異なりますので、注意が必要です。

(D.I.算出の例)
企業の収益を中心とした業況について全般的な判断を問う質問では、(1)良い、(2)さほど良くない、(3)悪い、の3つの選択肢があります。
例えば、回答が以下のような場合の業況判断D.I.は、△5%ポイント(注)となります。
表 D.I.算出の例 回答社数 回答社数構成百分比 (1) 20社 20% (2) 55社 55% (3) 25社 25% 合計 100社 100% 業況判断D.I.=(20%)-(25%)=(△5%ポイント)
- 「%ポイント」は、構成百分比(%)同士の差を示す単位です。

年度計画では何が公表されるのか?
日銀短観では、業況判断DIや雇用人員判断DIなどの項目別のDIに加えて、収益や設備投資に関する年度計画も公表されます。
年度計画では、企業の売上高や利益額、設備投資に関しての実績と、前年度比・前年同期比でどれほどの収益が見込まれるのか、などの先行きについて調査した結果が示されます。修正幅も公表されるため、「予想に対して実際はどうだったのか」についても確認することができます。
従って、企業の事前予想と修正幅から、企業が現在どういった状況に置かれているのか、企業は、先行きに対してどういった見方をしているのか、について知ることができ、先行き予測の判断材料として活用することができます。
日銀短観の中で1番注目されるDIとは?
日銀短観では、様々な項目が公表されますが、その中でも最も注目されるのは、製造業・大企業の業績判断DIです。実際、日銀短観に関するニュースでも、製造業・大企業の業績判断DIが大体的に取り上げられる傾向にあります。
なぜ、製造業・大企業の業績判断DIが注目されるのでしょうか?その理由として、景気との連動性が非常に高いことが挙げられます。
事実、過去の景気動向を見ても、景気の山・谷と、製造業・大企業の業績判断DIのトップ・ボトムは、概ね連動していることが分かります。
従って、製造業・大企業の業績判断DIが上昇傾向にあるのか、低下傾向にあるのかによって、景気が上昇局面にあるのか、後退局面にあるのかを概ね判断することができるのです。
設備投資の先行指標 〜 設備投資計画
業績判断DIの次に、注目度の高い項目として、年度計画で発表される、設備投資計画が挙げられます。
短観で発表される設備投資計画は、GDPで発表される設備投資と高い相関関係があり、GDPベースで発表される設備投資の先行指標とされています。
そのため、調査対象の企業範囲や設備投資に含まれる項目は多少異なりますが、短観の年度計画で発表される設備投資計画は、GDPベースで発表される設備投資を予測に有効であると言えます。
