1.ABX指数とは?
ABX指数とは、民間情報会社であるマークイットによって公表され、 サブプライムローン担保証券(RMBS)20銘柄で構成される指標です。尚、指数に含まれている20銘柄は、6ヶ月に1度、マークイットによって見直しが実施されます。


ABX指数は、サブプライムローン担保証券市場の動向を示す指標であり、サブプライムローン担保証券市場の動向を追う上でのベンチマークとされています。
実際、リーマンショック時の状況を描いた映画「マネー・ショート」でも、ヘッジファンドマネージャーであるマークが、サブプライムローン担保証券市場の動向を確認する際、「ABX指数は今どうなってる!?」と尋ねるシーンがあります。
マークがABX指数の動向を尋ねた時点で既に、サブプライムローンのデフォルト率が徐々に上昇していたため、ABX指数も少しずつ下落している局面でした。
このように、ABX指数は、ローンの返済ができない借り主が増加(=デフォルト率が上昇)すると下落し、反対に、景気が良くデフォルト率が低ければ上昇する指標です。
2.ABX指数は現在どうなっているのか??
ABX指数は現在、一般には公表されておりません。実際、IHSマークイットのホームページには、ABX指数についての説明は記されておりますが、指数の動きを示すチャートは掲載されておりません。
米国の金融メディアである「Investopedia」が公表している記事によると、ABX指数は一般公開はされておらず、ライセンス契約を行った機関にのみ、指数の情報を公開しているようです。
The details of the Index are not disclosed publicly, requiring trading groups to license the Index data from Markit to use it as a steady resource for determining market trades.
3.どうやって計算されてるの?
国際決済銀行が公表している「The ABX: how do the markets price subprime mortgage risk?」という資料によると、ABXの簡易的な計算式は以下の通りです。
price = 100 + PV (coupons) – PV (writedowns, shortfalls)
同資料によると、計算式に含まれている「PV(coupons)」は、一般的に無リスク資産とされる国債などの利息を示しており、「PV (writedowns, shortfalls)」というのは、指数に含まれている「RMBS」のデフォルト率やローン借り主の滞納などが含まれます。
そのため、もし、全構成銘柄(RMBS 20銘柄)の内、10銘柄のデフォルトが確定すれば指数は50になり、75銘柄のデフォルトが確定すれば指数は25になります。
こういった具合で、サブプライムローン担保証券(RMBS)20銘柄に含まれている「サブプライムローン」の滞納率やデフォルト率などによって、ABX指数は算出されているのです。
4.リーマンショックとABX指数
ABX指数は、サブプライムローン担保証券の動向を表す指標ですが、サブプライムローンが発端となったリーマンショック時には、どのような値動きをしたのでしょうか?
ABX指数は、リーマンショック直前の2007年に55を記録し、2007年〜2009年の2年間で、50%以上も下落しています。
このように、ABX指数は、リーマンショックが本格化する少し手前から下落し始め、リーマンショック時も大きく下落しました。
リーマンショック時の時系列とABX指数の値動き詳細は、以下グラフの通りです。
年月 | 出来事 | ABX指数 |
2006年1月 | ABX指数公表開始 | |
2007年 | 不動産担保ローン破産が顕著に | 指数が55を記録 |
2007年後半 | 指数が乱高下 | |
2008年初期 | 経済危機の顕在化 | 指数急落 |
2008年9月 | リーマン・ブラザーズ破綻 | |
2009年初期 |
2008年第二四半期からの資金移動が90%消失 |
2007年からの2年間で指数が50%以上下落 |
・住宅ローン担保証券の動向を示す指標
・一般公開はされていない
・マークイットが公表している
・サブプライムローン担保証券(RMBS)20銘柄で構成
・構成銘柄は半年に1度見直される
・指数の値動きは、指数に組み込まれているサブプライムローン担保証券(RMBS)のデフォルト率や滞納率などによって決まる