住宅市場に出回っている約200,000件の住宅をカバーしているライトムーブ住宅価格。ライトムーブ社によると、そのカバー率はなんと、95%程にも及ぶとのことです。
もちろん、英国国内に、これほどまで広範囲な住宅市場をカバーしている指標は、他にありませんので、英国を代表する住宅価格指標とされています。
今回は、そんな英国の住宅市場を知る上で欠かせないライトムーブ住宅価格について、徹底解説していきます。

目次
ライトムーブ住宅価格とは?
ライトムーブ住宅価格とは、ライトムーブ社(英国の大手不動産サイト)が公表する住宅価格の平均額と前月比&前年度比の変動率を示す指標です。英国全土の情報に加え、地区ごと(11地区)の情報も公開されます。

本指標は、2018年1月にデータの取得方法が改変され、それまで調査対象に含まれていなかったスコットランドも調査対象に含まれるようになりました。それに加え、算出方法の見直しもなされ、より実態に近い住宅価格が算出されるようになっています。
また、ライトムーブ住宅価格は、住宅が市場に出た瞬間の売り出し価格をベースに算出されている点も、他の住宅価格指数とは違い特徴的です。

ライトムーブ住宅価格の特徴
ライトムーブ住宅価格の特徴は、その速報性と信頼性の高さにあります。実際、英国の住宅関連指標の中で、最も速報性が高い指標として知られており、英国の住宅市場の約95%の住宅が調査対象であるため、信頼性も高い指標です。
このように、速報性と信頼性の両方を兼ね備えた指標であるため、英国の住宅価格指数と言えば、「ライトムーブ住宅価格」と言っても過言ではないほど、注目度も高い指標となっています。

また、不動産仲介業者にアンケートを実施し回答を得た価格ではなく、実際にライトムーブ社のサイトで提示されている価格を基に算出されている点も、本指標の信頼性の高さにつながっています。
ライトムーブ社ってどんな会社?
ライトムーブ社は、英国最大の不動産サイトを運営する不動産会社です。英国の90%以上の不動産仲介業者が同サイトを利用しており、市場に出回っている住宅の実に95%程を取り扱っています。
ビジネスモデルとしては、不動産仲介業者が紹介したい物件を、ライトムーブ社のポータルサイトに掲載してもらうことによって、顧客が幅広い物件にアクセスできる機会を提供しています。
また、ライトムーブ社によると、同サイトのアクセス数は、毎月1億以上とのことです。
ライトムーブ住宅価格の動向


2019年1月から2019年6月まで緩やかに上昇。8月には、大きく下落していますが、8月は物件が売られやすく、それに伴い価格も下落する傾向があるため、例年通りだと言えます。
12月は、前月比で-0.5%となっておりますが、8月同様、例年下落する傾向にあり、2019年12月の結果は、直近15ヶ月間で2番目に低い下げ幅となっています。
2020年01月は、前月比+2.3%と、「ライトムーブ住宅価格」が誕生して以来、最も大きな上げ幅となりました。
英国が抱える住宅問題と原因

住宅問題の現状
英国では、平均賃金の上昇率より、住宅価格の上昇率の方が高く、若年層や中低所得層が住宅を取得するハードルが高くなっています。
National Housing Federation (英国の住宅協会)の調査によると、840万人の英国国民が、安全が十分に確保されていなかったり、住宅価格が高すぎたりと、相応な住宅に住めていない現状にあるそうです。2019年時点の英国の人口が約6685万6千人ですので、全人口の12.5%程の国民が不相応な住宅で暮らしている計算になります。
また、スコットランドの公立の研究大学である
ヘリオット-ワット大学の調査では、以下のような調査結果がでています。
・360万人が過密な状態で暮らしている
・250万人が賃貸やローンを組む余裕はない
・40万人がホームレス状態orその危機にある
*上記事項に2つ以上あてはまる人もいます。
これらの調査結果が示す通り、英国が抱える住宅問題は、非常に大きなものとなっています。英国政府も、民間の非営利団体である「住宅協会」を通して、比較的低価格な公営住宅の供給したりと、住宅改革を行っておりますが、根本的な問題解決には、至っていないのが現状です。

その原因
上述したような住宅問題の原因として、以下が考えられています。
①移民の流入による住宅価格の高騰
英国は、労働に出稼ぎで住み着く移民が年25万人と、EU圏内でも相対的に多くなっています。これに伴い、住宅需要が高まり、供給が追いつかず、住宅価格が上昇する原因になっています。そのため、英国与党・保守党は、EU離脱によって、移民流入数を10万人以下を目指しています。
②建設コストの増加
建設業界における人出不足やインフレにより、建設コストが年々上昇しています。こうした建設コストの増加が住宅価格の上昇につながっています。
③居住用住宅の供給不足
大手建設業者は、収益性のある中高価格帯の住宅供給に力を入れています。そのため、実際の住宅需要が最も大きいとされる中低価格帯への供給が相対的に少なくなり、需要がある層への供給不足が深刻になっています。
英国の住宅問題は、長年英国を悩ませており、2000年代に入ってから、それが特に顕著になりました。こうした英国住宅事情の怒りの矛先が「移民」に向き、英国のEU離脱を決めた国民投票の結果にも影響を与えたと言われています。
このように、英国が抱える住宅事情は、あまりにも深刻で政治を左右するほどにまで発展しております。収まりがつかない住宅問題を英国政治がどのように対処していくのか、ブレグジット後の住宅市場は快方に向かうのか、今後の動向に注目です。
☆まとめ

ライトムーブ住宅価格 | |
調査期間 | ライトムーブ社 |
公表日 | 毎月中旬 |
指標概要 | ライトムーブ社(英国の大手 不動産サイト)が公表する住宅価格 の平均額と前月比&前年度比の 変動率を示す指標 |
調査対象 | ライトムーブに登録 されている約200,000件程の物件 |
指標の特徴 | ①速報性が他の住宅指標よりも早い ②信頼性が高い |
☆情報の信頼性
本記事の「ライトムーブ住宅価格」の説明部分に関しては、主にライトムーブ社のホームページや資料を参考に記述しています。
参考 : Rightmove