週間石油在庫統計について徹底解説!!在庫から垣間見える原油価格マイナスの真相とは??


「2020年4月20日、WTIの原油先物価格は一時、1バレル=マイナス40ドル32セントをつけました。」


まだ記憶にも新しい原油先物価格マイナス事件から、はや半年。当時、この一文を見て、「あーなるほどね!先物価格がマイナスになったのね!」とすんなり理解できた人はどれほどいたでしょうか?


恐らく、大半の人が、「価格がマイナスってどういうこと?」「マイナスになったらどうなるの?」「そもそもWTIの原油先物ってなに?」と疑問に思ったはずです。


今回は、この原油先物価格マイナス事件と関係の深い「週間石油在庫統計」について徹底解説していきます。


週間石油在庫統計の内容について徹底的に解説しつつ、そもそも原油の在庫増減が何を示しているのか?、原油先物価格がマイナスになった原因や「価格がマイナス」になるとはどういうことなのか?など、「週間石油在庫統計」を読み解く上で欠かせない情報もしっかりカバーしていきます。


リスくん
原油先物価格のマイナスについてのみ知りたい方は、「原油価格がマイナスになった理由とは?」まで、読み飛ばすことをおすすめします。

▪️この記事から知れること
・週間石油在庫統計について
・原油・石油などの違い
・原油在庫の増減が意味すること
・原油価格マイナスのメカニズム
・原油価格マイナスの主な要因
・注目すべき「地域」の在庫について

・週間石油在庫統計とは?

週間石油在庫統計とは、米国エネルギー省のエネルギー情報管理局(EIA)が毎週、WPSR(Weekly Petroleum Status Report、週刊石油状況報告)の中で公表する原油や石油、ガソリンなどの在庫を示した統計のことです。


EIAは、毎週水曜日の10:30am(米国東部標準時)に、金曜日時点の原油や石油などの価格・需要・供給・在庫などについて記載された最新のWPSRを公表します。


尚、月曜日が祝日の場合は、木曜日に公表されます。

WSPRで公表される在庫は、原油や石油だけではなく、留出油(ディスティレート)や灯油、道路油など、多種多様な油の在庫量も公表されるのが特徴的です。


また、SPRと言われる国家が緊急事態に備えて備蓄している原油の在庫量は除外して公表されます。


赤ちゃん
SPRというのは、「Strategic Petroleum Reserv」の略で、米国のエネルギー省が、自然災害などの緊急事態に備えて備蓄している原油のことを指すよ。

このように、EIAは、SPRを除いた原油などの在庫量を、毎週水曜日の10:30amに、「週間石油在庫統計」という形で公表しているのです。


原油などの在庫量は、「原油」「石油」「灯油」といったように、その性質別にも公表されますが、東海岸や西海岸、ニューイングランドといったように 地域別でも公表されます。



その中でも特に注目されるのが、 オクラハマ州クッシング在庫 です。


リスくん
オクラハマ州クッシング在庫については、「原油価格がマイナスになった理由とは?」で詳しく説明しています。

・原油・ガソリン・留出油の違いについて

「週間石油在庫統計」では、様々な形態の油の在庫量が公表されますが、その中でも特に注目度が高いのは、原油・ガソリン・留出油(ディスティレート)の3つです。


リスくん
そもそも、留出油(ディスティレート)とは、原油から精製される石油燃料の一種で、ガソリンなどの軽質な留分と重油などの重質の留分の間に属するものを指します。軽油やディーゼル燃料がそれにあたり、用途も幅広いため、景気サイクルの影響を受けやすいのが特徴です。

では、原油・ガソリン・留出油(ディスティレート)の3つは何が違うのでしょうか?その答えを示す、1枚の図がこちらです。

EIA


この図を見てそれぞれの違いが分かった人は、この項を読み飛ばしていただいて大丈夫です。


まず、原油とは全ての油の源です。油田から採掘されたばかりの、何も精製されていない状態の油のことを指します。英語では、「crude oil」と呼ばれています。


上の図の中に、「crude oil」という項目がないのは、そもそも原油は全ての油の元であり、上の図にある各項目は、1バレルの原油から精製される石油製品の種類を示しているからです。


実際、上の図のタイトルには、「petroleum products made from a barrel of crude oil,2019(1バレルの原油から精製される石油製品,2019年)」と記載されています。


赤ちゃん
1バレルというのは、上の図にあるような樽1つ分に入る量のことを指します。1バレルは、米国では約119.2リットル、英国では約163.7リットルとされています。

続いて、ガソリンとは、原油から精製される石油製品で、軽質な留分を含むものを指します。


そもそも様々な石油製品は、原油を蒸留させて精製されています。


そして、蒸留後に残ったもの(留分)によって、石油製品が種類分けされており、その中でも、比較的軽質な留分がガソリン と呼ばれています。

そして、留出油(ディスティレート)とは、上でリスくんが説明している通り、ガソリンなどの軽質な留分と重油などの重質な留分の間に属するものを指します。


従って、原油は何も手を加えられていない油田からでたままの油で、ガソリンと留出油(ディスティレート)は、原油から精製された石油製品である点では同じですが、蒸留後の留分の性質がそれぞれ異なります。

以上が、「週間石油在庫統計」の中でも特に注目される「原油・ガソリン・留出油(ディスティレート)」の3つの違いです。


・在庫の増減が意味すること

EIAが、「週間石油在庫統計」にて、原油や様々な石油製品の在庫を毎週公表しているということについては、ご理解いただけたかと思いますが、そもそも原油や石油製品の在庫増加は何を示しているのでしょうか?


一般的には、原油や石油製品の在庫が増加すると、原油や石油製品の需要が減少していることを示しています。


反対に、在庫が減少すると、それだけ原油や石油が必要とされているということですので、需要が増加していることを示しています。


また、在庫水準は、将来の価格動向を推測する上でも重要視されます。


なぜなら、価格は、需要と供給の関係で決定されるからです。そのため、 在庫水準が増加=需要が減少=将来価格が減少する可能性大となります。

反対に、在庫水準が減少=需要が増加=将来価格が増加する可能性大となります。

このように、原油や石油製品の在庫増減は、需給状況を示しており、将来の価格を推測する上でも重要となってくるのです。

・石油在庫統計は本当に重要な指標なの

近年、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーが注目され、ガソリン車をなくそうとする動きがあったりと、石油からのエネルギー転換が、特に先進国の間で進んでいます。


このように、石油の重要性がどんどん低下していく中で、「石油在庫統計」は依然重要な指標なのか?と思うかもしれません。


しかし、私たちの生活には依然石油からのエネルギーが欠かせないのが事実です。


実際、EIAが公表する1950年〜2019年までの主なエネルギー消費量の推移を見ると、石油の消費量が極端に減少している訳ではない事が見て取れます。

EIA


以下は、2019年時点のエネルギー消費量の比率を示すグラフです。

EIA


再生可能エネルギーは僅か11%で、石油製品が37%と、年間の消費量で見ても最も大きな割合を占めています。

このことからも、現在の私たちの生活の中心を占めているエネルギーは、石油エネルギーであることが分かります。


そのため、石油製品は依然重要度が高く、製造業などの他の産業にも与える影響が大きいため、その動向を追う上で、「石油在庫統計」は重要な指標であると言えるのです。


・原油価格がマイナスになった理由とは?

2020年4月20日、歴史上初めて、ニューヨーク原油先物市場で取引されている「WTI原油先物」がマイナス価格をつけ、世界中の投資家を震撼させました。


ここでは、そもそも価格がマイナスになるとはどういうことなのか?について説明し、その後、原油価格がマイナスになった原因を見ていきます。


価格がマイナスってどういうこと?

普通に生きてて、価格がマイナスになる物を買うことはまずないと思いますので、「原油先物価格がマイナスってどういうこと?」と思った方は多いと思います。


価格がマイナスになるということは、ひとことで言うと、「売り手が買い手に現金を支払ってでも、その商品を引き取ってもらう」という状況を表しています。

価格がマイナスになったWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)は、西部テキサスで産出される原油であり、先物としてニューヨーク・マーカンタイル取引所で取引されております。


リスくん
先物取引というのは、将来の売買について、現時点で約束する取引のことです。例えば、Aさんが、1バレル200円の原油を、3ヶ月後までに100バレル購入する約束をしたとします。1ヶ月後に1バレル400円と倍になったとしても、Aさんは「1バレル200円の原油を100バレル購入する」約束をしているため、1バレルあたり400円ではなく、200円で原油を購入することができるのです。


WTIの場合、先物を決済しないといけない満期月(限月、げんげつ)が定められており、5月が限月の取引は、4月21日が最終取引日でした。


WTI原油先物の買い手は、限月の最終取引日に、その先物を売るか、現物(原油)を実際に受け取るか選択する必要があります。


感染症拡大の影響で、原油需要が大幅に減少し、価格が低下基調にあるため、原油を実際に保有するのは保管コストがかかりデメリットだと判断した投資家が、「お金を払ってでも原油を引き取ってもらう」という事態が発生しました。


このように、原油先物価格がマイナスということは、限月の最終取引日に、原油を保有しておきたくない投資家が「お金を払ってでも原油を引き取ってもらった」ということを意味しています。


なぜ、原油先物価格はマイナスになったのか?
原油価格が2020年4月20日にマイナスになった背景には、様々な原因があるとされておりますが、その一因として、オクラハマ州クッシング在庫の貯蔵能力が限界に達していたことが挙げられます。



オクラハマ州クッシング在庫とは、名前の通り、オクラハマ州のクッシング市にある原油在庫のことです。また、オクラハマ州クッシング市は、WTI原油の主要な貯蔵場所となっています。


その、オクラハマ州クッシング市の原油貯蔵スペースが限界に達しつつあり、スペースを確保するためのコストが上昇したたことが、WTI原油の投げ売りを誘発したとされています。


このように、オクラハマ州クッシング在庫の状況は、WTI原油価格に大きな影響をあたえるため、「週間石油在庫統計」の中で最も注目されるポイントです。


リスくん
オクラハマ州クッシング在庫の貯蔵能力の上限は、7,600万バレルとされています。この上限値を知っていれば、「週間石油在庫統計」でオクラハマ州クッシング原油在庫が公表された時に、現在の貯蔵率を把握するのに役立ちます。

オクラハマ州クッシング在庫の最新データ確認方法

ここでは、「EIA週間石油在庫統計」で最も注目され、WTI原油の現物受渡し場所としての役割を果たす「オクラハマ州クッシング在庫」の最新情報確認方法を紹介しています。


最新結果へのアクセス方法

EIAのホームページへアクセス

画面を下にスクロールし、「Total Stocks (Weekly & Monthly)」を押下

Areaのところをプルダウンし「Cushing,Oklahoma」を選択

表に表示されている数値がその週の在庫量


尚、グラフに表示されている数値の単位は、「1,000バレル」です。例えば、数値が「56,000」と表示されている場合は、「5600万バレル」であることを意味しています。


また、数値ではなくグラフで在庫推移を見たい方は、表に表示されているチェックボックスにチェックを入れ、「Graph」を押下するとグラフが表示されます。


もしくは、チェックボックスにチェックを入れ、チェックボックスの真横にある青い鍵みたいなマークを押下してもグラフを表示させることができます。


・まとめ

ここまで、EIAが公表する週間石油在庫統計の説明に加え、WTI原油先物価格がマイナスになった件やオクラハマ州クッシング地区の原油在庫についてもふれてきました。


今後、クリーンエネルギーへの転換に伴う「脱石油化」が進み、石油の重要性はますます下がるとされています。


そうした中で、原油や石油製品が市場の中でどういった役割を果たしていくのでしょうか?


ポイント!

公表タイミング 毎週水曜日の10:30am
(米国東部標準時)
公表機関 EIA(米国エネルギー省)
指標概要 米国エネルギー省のエネルギー
情報管理局が毎週水曜日(月曜日
が祝日なら木曜日)に、地域ごと
及び石油製品の種別ごとの在庫
量を公表する指標。
オクラハマ州クッシング在庫が
特に重要視される。
注目ポイント WTI原油の現物引渡し
場所である「オクラハマ州
クッシング地区」の原油在庫
は、WTI原油先物価格に大きな
影響を与えるため、重要視
されている

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